国会図書館、OB情報含む厚労省職員録の閲覧禁止
元厚生次官宅襲撃事件を受け、国立国会図書館(東京・永田町)は20日朝から、厚労省職員やOBの個人情報が掲載された職員録の閲覧を禁止した。
同館によると、閲覧できなくなったのは、1977年~2008年の旧厚生省と厚労省の職員録5種類約35冊。厚労省から19日に、「善処をお願いしたい」と電話があったという。同館総務課は「住所などが掲載されていた場合、個人の生命にかかわると判断した」としている。
また、厚労省内にある国立国会図書館支部厚労省図書館は20日、他の中央省庁内にある26支部に対しても、職員録の閲覧禁止を文書で要請。厚労省図書館は「人命にかかわる同様の事件が連続する可能性が懸念されるため」としている。
東京都中野区の吉原健二さん(76)の妻靖子さん(72)が、宅配便業者を装った男に刃物で刺された際、男が玄関前まで箱を持ってきていたことも判明した。埼玉県警と警視庁は、両事件とも周到に準備や注意をしている点で、犯人像が酷似しているとみて捜査を続けている。
埼玉県警幹部によると、山口さん宅のインターホンは門扉と玄関ドアの計2か所にあり、2か所ともボタンから、犯人のものとみられる指紋は採取されなかった。玄関の外と内のドアノブのいずれにも犯人のものらしき指紋は残っておらず、ふき取った跡もなかった。室内外からは36個の指紋が採取されたが、夫妻や関係者のものとみられる。
また室内に残された血痕が付いた足跡は、玄関から台所とダイニングルームの入り口付近まで続いていた。同県警は犯人が山口さんらを殺害後、ほかに誰かいないかを確認するため、上がり込んだ可能性が高いとみている。
屋内の足跡と屋外で見つかった足跡は酷似しており、県警幹部によると、靴は有名ブランドではなく、安価な大量生産品とみられるという。
ダイニングルームのテーブルにあった二つの財布には、いずれも札はなかった。盗まれたかどうかは不明。
一方、警視庁幹部によると、吉原さん宅で犯人に襲撃された妻の靖子さんは20日、入院先の病院で事情聴取に応じ、「インターホンで『宅配便です』と呼び出され、玄関を開けて応対したら突然刃物で胸を刺された。その後の犯人の行動については覚えていない。犯人は1人だった」と話したという。
靖子さんの証言では、犯人は、つば付きの野球帽か作業帽のようなものをかぶり、手には箱を持っていた。年齢は30~40歳で身長165センチ程度。靖子さんは刃物で切りつけられた際、玄関先から家の中に逃げ込み、その後、玄関から飛び出したという。
同庁の現場検証では、玄関のほか、廊下、ダイニング、リビングから犯人のものとみられる足跡が、血痕を追うように発見された。靖子さんは右背部にも1か所刺し傷があり、同庁は、犯人が逃げる靖子さんを家の中まで追いかけた可能性があるとみている。
自宅を襲われた2人の元次官はいずれも年金行政に深くかかわっており、一連の年金不信との関連性も指摘されているため、社会保険事務所も標的になる可能性があると判断した。
各地の事務所では年金記録漏れ問題で相談に訪れる人が多く、安全確保は大きな課題。職員にも、事件による不安感が広がっている。社会保険庁によると、すでに各地の警察が事務所近辺を警備しているほか、幹部の自宅周辺の警戒も強化されているという。
舛添厚労相は「年金相談に来たお年寄りが事件の巻き添えになるようなことは絶対に避けないといけないし、窓口の職員の士気にもかかわる」と警備要請の理由を説明した。